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サラリーマン生活から酪農家に |
親の代で廃業した牧場を立て直そうと、サラリーマン生活にピリオドを打って酪農の世界に入ったのは平成8年のこと。
それまで、畜産関係の商社に勤めていたこともあり、商社時代に培った知識や技術を実際の酪農に活かしたいと考えたのがきっかけでした。
まず最初に取り掛かったのは牛集め。
牛乳の生産量をいかに増やすかを一番に考え、毎朝4時に起き、普通は1日2回のところを1日3回も搾乳して出荷をする毎日が3年間続きました。
とにかく、その当時は牛乳をたくさん搾って、たくさん売って、少しでも早く牧場を立て直したい、という気持ちが強かったんです。 |
搾って、出荷してという毎日は、自分が丹精込めて育て上げた牛の牛乳がどれだけ美味しいのか、また、消費者の皆さんがどのように反応してくれているのかが全く分からず、ものすごく頑張っているのに、どこか空虚感が漂う、気力の上がらない日々へと繋がってしまいました。
今になって思えば、牛にも相当のストレスを与えていたと思います。
そこで、このままではいけないと思い、次に考えたのがヨーロッパの酪農家のスタイルでした。
ヨーロッパの酪農家は、牛乳をただ出荷するのではなく、自ら搾った牛乳に付加価値を付けるべく、チーズ製造などに積極的に取り組ん でいるのです。
搾乳と出荷の他に、チーズ作りの作業が加わり、今まで以上に忙しくなるのは明確でしたが、それでも自分が育てた牛の牛乳を最大限に活かしたいという思いから、それまで倉庫だった場所を改修して、チーズ作りに必要な釜を備えたチーズ工房を造りました。
また、消費者の皆さんの反応を直に感じ取りたいという思いも実現すべく、チーズ工房に併設する形でレストランをオープンさせることも決め、その準備に取り掛かったのでした。 |
新鮮なモッツァレラチーズを目指して |
チーズ作りにあたって、私が選んだのはフレッシュタイプのモッツァレラチーズでした。
フレッシュタイプのチーズというのは、新しければ新しいほど美味しく、輸入物などの時間が経過したものは、美味しくはあっても本当の味ではないのが事実。
“真にフレッシュなモッツァレラチーズとは、一体どんな味なのか?”という疑問が、いつしか“自分で作ってみたい!”というチーズ作りへの意欲に変わり、でき上がったばかりのチーズ工房に足を踏み入れました。
とはいっても、今まで一度もチーズ作りをしたことがない私。
作り方を教えてくれる人がいるわけでもなく、自ら考え、推理して、試作を重ねる日々が続きました。
フレッシュならではのしっとりとしたやわらかさに仕上げることもできずに肩を落としているところへ、更なる追い討ちがかかりました。
狂牛病の発生に伴い、原料の牛乳を固める酵素が手に入らなくなってしまったのです。
これではモッツァレラチーズを作ることができません。 どうしようかと思考を重ねた結果、“もうどうにでもなれ!”のイチかバチか精神で、酵素の代わりに熱湯を注ぎ入れてみたところ、何とそこに理想とするやわらかさが生まれました。 |

完成したモッツァレラチーズ |
酵素にはできない、熱湯がもたらす自然な牛乳の固まりが、私の目指していたモッツァレラチーズだったのです。
この“災い転じて福となす”状態を味方に、その日の気温、湿度、牛乳の状態を加味した上で、温度管理や熱湯を入れてからチーズを形作るまでの時間などを研究し、試行錯誤の末、やっとの思いで自分が納得のいくモッツァレラチーズを作ることができました。
札幌にあるイタリアンレストランのシェフにモッツァレラチーズの評価をしてもらったり、レストランのオープンに向けて、有名店を食べ歩き、技や味を見て回ったり、某有名ホテルのシェフに料理のご指導を頂いたりと、目まぐるしいほどに忙しい日々を送り、平成11年11月にレストランのオープンとなったのでした。 |
更なる美味しさを求めて |
毎日搾りたての牛乳で作るモッツァレラチーズは、レストランメニューでの使用はもちろん、ホテルや他のレストランからも注文を頂けるようになりました。
また、マスコミで度々取り上げてもらえるようになってからは、嬉しいことに口コミでその評判が広がり、レストランオープンの1年後にはオンラインショッピングを始めるまでになりました。
酪農を始めた頃に比べると、忙しさは倍以上です。
レストランの定休日以外は毎日チーズを作り、酪農家の常ですが、生き物が相手なので全く休みは取れません。
それでも以前に感じていたような空虚な気持ちはなく、充実の日々を送らせて頂いています。
それは、私が自信を持って提供する料理やモッツァレラチーズに対して、レストランに来てくれたお客様、ホテルやレストランの担当者、そして日本全国から寄せられる注文メールが、私の予想以上の嬉しい反応を見せてくれるからです。
本物の味を求め続け、努力したかいがありました。
私を支えてくれた皆さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。 |
今年度(平成19年)からは、レストランに隣接する畑で野菜作りも始めました。
農薬を使わずに、自然そのままに育てた野菜は、とても味が濃いんです。
自分が自信を持って提供できるものをこれからはどんどん皆さんに味わってもらいたいと考えています。
「みるくのアトリエ」のモッツァレラチーズは、健康な牛の安全な牛乳からしか作りません。
牛乳の味と品質を考慮して、餌はあくまでも自然の牧草を与えています。
牛乳の質が良くなれば、モッツァレラチーズの味わいもより豊かになるのです。

みるくのアトリエ寺田牧場
寺田 和弘 |
チーズ作りへのこだわりは、牛の飼育から始まると言えます。
現在、ホルスタイン牛5頭、ジャージー牛2頭、ホルスタイン牛とブラウンスイス牛を掛け合わせて生まれた牛4頭の計11頭を飼育しています。
それぞれが出す牛乳の味や質は違います。
私は、それらを上手く組み合わせることで、今よりももっと美味しいモッツァレラチーズを作れるのではないかと考えています。
私のチーズ作りはまだまだ始まったばかりです。
野菜も牛乳もチーズも、自然そのものの味が一番。
もっともっと研究を重ねて、自分ならではの味をしっかりと打ち出し、私が本当に美味しいと思える作品を多くの皆様に味わってもらいたいと思っています。
一つ一つを丁寧に作り上げたモッツァレラチーズ、そしてそこから生まれるピザやパスタの数々。
手間ひまは一切惜しみません。
自然が生み出した本物の味を是非一度ご賞味下さい。 |
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